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Channel: nonの徒然日記
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お産

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長文記事です。

先日、妹が第1子の女の子を出産し、私、カメラマンとして出産に立ち会いました。
私は4人きょうだいなのですが、親にとっては初孫です。長く不妊治療をしていた結果の妊娠でした。
40時間の超難産だったのですが、後から妹に聞いたところ、お産の痛みは「麻酔なしで手術する感じ」らしいです。それが40時間。恐ろしすぎます。
生々しい話ですが、皆そうやって産まれて来るにも関わらず、あまりお産の実態って知られてないと思い、妹にも許可を貰ったので、記事にしようと思いました。

4月11日午後3時頃に妹の旦那さんが電話をかけてきて「陣痛が始まって入院して、一晩かけたけどあまりうまくいかなくて、陣痛促進剤を使い始めたから、もうすぐ産まれそう」と言われたので、クリニックに向かい自宅を出発。予定日から1週間遅れ。

妹は助産師なので、勉強のために、少し割高でも良い産院でお産したいということで、有名なクリニックを選んでいました。色々なお産の仕方があるところで、妹は和室での出産を選んでいました。
和室に入ると、照明が抑えられて暗く、部屋の中は助産師さんもおらず、妹が一人で、陣痛促進剤の点滴をし、布団の上の大きいバランスボールに座って、左右に腰を動かしながら、苦しそうにふーふー息をしていました。
私は旦那さんにカメラを渡され、邪魔にならないように部屋の隅に正座して座りました。

暫くすると妹のお産を取る担当の助産師のSさんが部屋に入って来ました。師長さんよりも偉いメディカルマネージャーさんで、ベテランの方とのことでした。
Sさんが子宮口に手を入れて、開き具合などの状態を見ました。その時のSさんが、目を閉じて子宮口の複雑な状態を図りながら、技を極めた仙人のような集中した表情をしていて、人がそんな表情をしているところを見たことがなかったので、凄いなーと思って見入ってしまいました。

その後30分おきくらいにSさんが部屋に来て、状態を見てくれたのですが、いくら時間が経っても子宮口の開きが7センチから変わらず(全開は10センチで、10センチにならないと産まれない)、陣痛も激しくなって来ていて、凄い雄たけびをあげながら何度も嘔吐したりするような状態に。少し難しいお産だと判断したせいだと思いますが、Sさんは、部屋にずっといてくれるようになりました。
Sさんはずっと子宮口に手を入れていて、妹が3分おきくらいに「今何センチ!?」と聞くのですが、全然変わらないので、妹にショックを与えないように、何センチかは答えずに手の指で開き具合を表して「こんぐらい」と言っていました。
助産師の妹は、陣痛が収まったすきに、「CPDじゃないの!?」とか専門用語を使って普通の産婦さんが言わないであろうことをまくしたてて処置の指示をしようとしていて、Sさんもさぞやりにくいだろうと思っていたら、妹は「助産師としての意識は捨てて!」と言われていました。普段は礼儀正しい妹ですが、医療側に対して敬語を使っている余裕が全くなさそうでした。

陣痛が収まる時間がなくなってきたなどの異変があり、Sさんともう1人の若い助産師さんの判断で、一度、陣痛促進剤をやめることになりました。一晩寝ないで苦しんでいるので、「これでちょっと寝てください」いうことだったのですが、何故か陣痛が全く収まらずに、でも子宮口の開きは7センチから変わらない状態が深夜まで及んだので、産まれるよう色々試すために、和室から分娩室に移ることになりました。
私はSさんに「休めるうちに休んでおいてください」と言われ、一緒に分娩室に入る旦那さんに「産まれそうになったら呼びに来るから」と言われ、和室に一人残されました。午前1時。私は洋服のまま毛布を被って眠りました。
お産に関する夢ばかりみる浅い眠りを経て、朝7時少し前に旦那さんが「産まれそう」と呼びに来ました。

分娩室に入ると、年配の医師(副院長)が、妹の診察をしているところでした。結果「これはなかなか産まれる状態ではない」とのことでした。時間がかかり過ぎだし、私は産まれそうということで呼ばれたので、「なんかおかしいのではないか」と思う。旦那さんも二晩徹夜で付き添っていて、顔色が限界でした。陣痛促進剤を再開し、赤ちゃんの頭が少し降りてきていて、Sさんも妹夫婦も「産まれそう」と思っていたところのこの診断だったので、旦那さんは「先が見えないね・・・」と絶望の言葉を呟いていました。

暫く絶叫時間が続き、また副院長が現れ、診察。
妹夫婦とSさんは、自然分娩は無理だと判断し、強い調子で副院長に、吸引分娩か帝王切開を求めました。妹は副院長に対しても助産師モードで「全開後2時間も経って母体疲労で分娩停止じゃん!!」という調子で要求をぶつけていましたが、副院長は、診察した結果、吸引分娩はまだ可能な状態ではないし、さっきよりもう少し赤ちゃんが降りてきていたので、様子を見たいと、追及の手から逃げるように分娩室からいなくなりました。

妹の痛がりかたににびびってしまって昨日から一枚も写真を撮れておらず、なんのために立ち会っているのかよくわからない私。

カンファレンスで難産の産婦がいるということが伝えられたようで、分娩室に、妹のお産は診ないはずだった理事長が登場。60代の恰幅の良い医師で、きっとなんとかしてくれるだろうという凄い期待感を持ってしまう雰囲気です。理事長が診察。この時も理事長の表情がSさんと同じで集中している仙人みたいでした。妹は理事長の腕に「帝王切開にして!!お願い!!」とすがりつきましたが、理事長ははっきりと「赤ちゃんは元気だし、帝王切開の適応はない」と言いました。妹が「もう無理だよ」と昨日から言い続けていることを繰り返した後、「へろへろだよ」と言うと、理事長が「へろへろじゃない!お母さんが頑張らないと産まれないんだ!」と一喝しました。

再び分娩室はSさんと妹夫婦、私の4人になりました。
子宮口は7センチ以降、自然には全く開かなかったので、Sさんの技術で10センチまで全開にして貰ったとのことでした。
Sさんは既に勤務時間を終えていましたが、妹がどうしてもSさんにお産を取って欲しいとわがままを言い、残業してくれていました。

30分ほどして、理事長が分娩室に戻って来て、診察。「吸引分娩にしよう」となりました。「できるの!?」と、光が差した瞬間でした。
吸引分娩は、赤ちゃんの頭に吸引カップをつけて引っ張って出すお産の方法です。この時、赤ちゃんの降り方も十分ではなかったし、首に短いへその緒がまきついたりしていて、難しい状態ではあったみたいですが、理事長が「リスク取って俺がやる」という感じでした。
助産師さんが新たに3人加わり、副院長も来て、合計6人体制の大手術みたいな様相に。

吸引カップが子宮に入るとき、妹の「ぎゃー!!!」という、今までで一番凄い叫び声が上がりました。
副院長がお腹を心臓マッサージみたいに圧迫し(この圧迫法は子宮破裂などの危険があるので、今はほとんどのところでやっていない技術のようです)、理事長が吸引カップで赤ちゃんを引っ張ります。ずっと叫び続けていた妹が無言になり、唇を結んで息を止め、いきみました。見てると本当に最後の馬鹿力ってあるんだと思いました。
しかし、赤ちゃん出てこず。
一度吸引が中断されると、妹の反応がなくなり、旦那さんと助産師さんが、緊迫した声で妹の名前を呼びました。旦那さんが「赤ちゃんの名前は何!?」と聞いても、何も言わない妹。この時私は、妹が死ぬんじゃないかと思いました。

暫くして妹が反応したので、2回目の吸引を実施。
息を止めていきむ妹に、医療側と一緒に分娩台のすぐ横に立っている旦那さんが勇気づけるように「産まれるよ!赤ちゃん頑張ってるよ!!」と大きく声掛けしています。私はカメラを構えて、妹の頭の方から写真を撮り始めました。
旦那さんが涙声で「頭出たよ!」と叫びました。私は「本当に??」と、奇跡だと感じて、写真を撮りながらたくさん涙が出て来ました。
旦那さんが泣きながら「体出たよ!」と叫びました。「産まれたんだ」と思いました。今まで姿の見えなかった赤ちゃんが姿を現し、すごく不思議でした。

旦那さんは以前から、お産の時に産まれた赤ちゃんを妻に受け渡す役割を、助産師さんではなく自分がやると言っていて、きょうだいとかから「なんなのそのこだわり」と言われていましたが、後から、私が撮った妹のお産の時の一連の写真を見ると、その受け渡しの瞬間の家族3人の姿が、一番劇的でした。

赤ちゃんの後に出てきた胎盤が、どう見ても巨大な内臓で、ショックを受けました。

赤ちゃんは、頭を引っ張られて狭い産道を通って来たので、お産直後、頭が縦にもの凄い伸びていて、私はシガニー・ウィーバーの映画のエイリアンみたいだと思いました。クリニックにお見舞いに来てその長い頭を見た弟は、ピッコロ大魔王みたいと言っていました。

若いヤンキーの産婦さんとかは、陣痛の時は「マジ痛てー!!」、産まれたら「マジ可愛いー!!」みたいに生命力のある感じらしいですが、妹のお産を見た限りマジ痛いどころの騒ぎではなかったので、若く見えても30を過ぎると体は老いているんだなと、生物的な厳しい現実を見ました。

私は今まで、医療というものをあまり信用していなかったのですが、今回お産立ち会いという経験をして、お医者さんと助産師さんの高い技術を目の当たりにし、体のことをよく知っていて正しく扱えるというのは、すごく神聖なことなんだと思いました。

赤ちゃんは、体の重さとか温かみとか、なんだか猫みたいです。

新生児はすごく変化が早くて、毎週末実家に帰るたび、どんどん可愛くなっています。
会うのが楽しいです。

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